2010/7/4

平穏な水曜日を願う人々

大手出版社の役員を務めている親友のＭ君。 週刊誌や月刊誌の責任者でもあります。

彼の週刊誌は木曜日発売。 火曜日の夜には印刷が始まります。 そうしないと木曜日の朝に全国の書店・駅売店・ コンビニに並べることができません。

だからＭ君は、火曜日の夕方から木曜日の朝にかけて 重大な出来事が起こらないことを願っています。 出来事に関する記事が載らないのならまだしも、 現実と矛盾する記事を載せてしまう恐れがあるからです。 私も陰ながら、毎週水曜日が平穏であるよう祈ってあげています。

最近、この「魔の時間帯」に大きな出来事が 発生したことが２回ありました。

一つは「鳩山・小沢辞任」発表。 これは６月２日・水曜日の出来事。 もう絶対に間に合いません。 そのため翌日の木曜日発売のＭ君の 週刊誌には「なぜ鳩山は辞めないのか」 といったトンチンカンな記事が・・・

「大変だったね」と、その数日後にＭ君に電話すると 「うん、実は前日に『辞めるかも』という 情報は入ってきたんだけど、まさか翌日に発表とはなあ・・」

「読者からクレームが来たりしないの？」 「来たよ、何本かの電話が。 私が自分で対応するんだけど、 謝るしかないよ。でも謝るだけじゃなくて 『来週号は面白いのでぜひ期待してください。 ウラ話も載せますので、 なぜ間違った記事になったのかもよく分かると思います。 ２週間分の面白さですから、ぜひ来週号を読んでください』 って話すんだ。どうにか納得してもらえるけど、でも疲れる」

先週も同様の事態が発生しました。 ベスト８を賭けた日本・パラグアイ戦が行われたのは 火曜日の深夜。 つまり試合開始時点で、木曜発売の雑誌の印刷がすでに始まっています。 勝っても負けても矛盾が起こらないような 記事を書く必要があるわけです。

どのように書いてあるんだろう、と興味津々で木曜日に その週刊誌を購入して読んでみました。

見事でしたね。「決勝トーナメントに進出した日本は・・」 といった書き方で、火曜日の結果がどちらであっても スムーズに読める原稿でした。 やっぱりプロだなあ。

それにしても「紙による出版」の限界を感じてしまいます。 趣味の分野の雑誌ならまだしも、 ニュース性の高い内容であればあるほど、 インターネット配信を相手にすると勝負になりません。

さらに「電子書籍」という、出版界に大打撃を与える 可能性を秘めたサービスも広がりつつあります。 この件についてもＭ君から「日本の出版社の考え方と 対応策」を聞いたのですが、またの機会に書きたいと思います。

ご意見・ご質問のある方は、ぜひメールでお寄せください。必ず返信します。
toshiki.karasawa@nifty.com
私の会社のアドレス宛でも構いません。なおお送りいただいたコメントは本ページで（お名前は出さずに）紹介させていただくこともありますのでご了承ください。